企業を取り巻く環境は複雑で、単純な法則にすることはたいへん難しいものです。水や風の流れ方でさえ、流体力学という複雑な計算式を用いてやっと表現できるのですから、人間というはるかに複雑なものの動きを簡単に表現できるような「法則」は見つけ出すのは至難のわざです。それでも経営者や研究者たちは、さまざまな調査や洞察、経験を通じて、そんな「法則」を発見しようとつとめてきました。今回は、顧客満足とクレームにまつわる様々な「法則」を見ていくことにしましょう。
まず、こんな比率で表される法則があります。
企業に届けられたクレーム:不満を抱えた顧客=1:25
これはeサティスファイ・ドットコムが調査したデータに基づくもので、『サービス・マネジメント』(カール・アルブレヒト、ロン・ゼンケ共著、ダイヤモンド社)という本で鍾愛されています。
この数字が意味するのは、わずか4%の顧客だけが、企業に不満を抱えたときにそれを伝えるということです。現場の担当者の人情からすれば来ない方がありがたいクレームですが、経営者としては問題です。顧客を満足させられなかったとしても、96%の顧客は不満点を、つまり改善点を教えてはくれないからです。
では、その「96%の不満」とは些細な不満なのでしょうか。
いいえ、同書ではクレーム1件に対して6件は「深刻な不満」であるとしています。さっきのパーセンテージにあてはめると、96%のうち24%。じつに4分の1は些細どころではない問題に、それでも黙っているのです。
ハインリッヒの法則
ハインリッヒの法則は「1:29:300の法則」とも呼ばれます。
「致命的な失敗1件に対して、顧客から苦情が来る失敗は29件、社内当事者がヒヤリとしただけの小さな失敗が300件隠れている」というものです。クレームを軸に比べてみると、クレーム1件に対して、10倍の「小さな失敗」があることになります。
これを、さきほどのeサティスファイ・ドットコムのデータと組み合わせると、こういうことが分かってきます。
クレーム1:社内当事者がヒヤリとする失敗10:内心不満を持つ顧客24
いかがでしょう。社内当事者がヒヤリとする失敗10に対し、内心不満を持つ顧客は24。この比率が意味するものは、顧客に与えてしまったなんらかの不満点のうち、半分以上は社内当事者でさえ自分で気づくことができない、ということなのです。
こうした「密かな不満」をどうやって知るか、ということが顧客中心主義を目指す会社にとってカギになってきます。
ガートナーの10の習慣
そこで、ガートナージャパンが2019年1月に発表した「10の習慣」というものがあります。
ガートナーは御存知のとおり、IT分野を中心に調査・アドバイス事業を行う会社ですが、これまでも論争をもたらすような様々な調査結果を発表してきました。そのガートナージャパンが2019年1月29日、「デジタルビジネス時代、顧客中心主義で成功している企業に共通する10の習慣」を発表したのです。それは、このようなものでした。
- 継続的に顧客の声に耳を傾ける
- 顧客からのフィードバックに確実に対応する
- 顧客のニーズを見越し、先回りして行動する
- 顧客との共感を自社のプロセスやポリシーに組み込む
- 顧客のプライバシーを尊重する
- 顧客の日常生活を通じて価値を提供する
- エンゲージメントを維持するよう従業員のモチベーションを高める
- ビジョンを構築・実行する
- カスタマーエクスペリエンス(顧客経験:顧客が感じる心理的な価値のこと)の向上に対する責任者を明確にする
- 顧客のニーズや状況に適応する
実は当社が提供するHappy or Not(ハッピーオアノット)は、この「10の習慣」の多くを守るためにとても適したシステムなのです。どのように適しているのか見ていきましょう。Happy or Notが関連してくると考えられるのは次の6つです。
1. 顧客の声に耳を傾け続ける
実は、顧客の声を聞くために意外と大変なのが、この「続ける」ということです。顧客にアンケートを取る、特に人間の調査員を使う場合には人件費も馬鹿にならず、年1回のみ実施しているという企業が多いのではないでしょうか。適切な質問を表示した端末を店舗などに設置しておくだけで、追加費用や手間がかからないのがHappy or Notです。
2. 顧客からのフィードバックに確実に対応する
2017年に発表されたTemkiレポート、State of Voice of the Customer Programsにおいて、大企業の63% は顧客からアンケート結果を集めることは得意だが、分析結果(インサイト)に基づいて行動をとるのが上手な企業は 24%に留まっている事がわかりました。HappyOrNotはそのシンプルな回答をベースに、企業が業務を改善することを促します。
3. 顧客のニーズを見越し、先回りして行動する
顧客からクレームが来るまで、顧客が満足しているか不満化が分からないというのは、情報収集が甘いと言わざるを得ません。日ごろから顧満足度をチェックし続けていれば、顧客のちょっとした不満に気がつける企業文化が育ち、クレームに対して後手に回るようなことも少なくなるでしょう。
5. 顧客のプライバシーを尊重する
ここはHappy or Notの大きな強みです。記名式はもちろん、ネットを介した調査なども、どうしても「個人情報を思っている以上に取られているのでは」という疑念が入り込むもの。その点、4つのスマイリーボタンのみが使われるHappy or Notは完全匿名で、プライバシーを尊重していることが顧客にも伝わります。
7. エンゲージメントを維持するよう従業員のモチベーションを高める
エンゲージメントとは、ここでは社員の会社に対する「積極的な関与」という意味で捉えられます。年功序列制度の崩壊や雇用形態の多様化が語られるようになって久しいですが、未だに社員から上司や経営者へはなかなか不満を口に出しにくいもの。HappyOrNotを社員向けに利用すれば、社員が仕事に愛情ややりがいを感じているかを測定することができ、不満傾向が強い点が見つかればそれを積極的に改善していく経営者側の姿勢を見せることができます。
10.顧客のニーズや状況に適応する
業が同じモノやサービスを提供していても、顧客のニーズや満足度はその時々で変化していきます。こうした状況の変化に対応するためにも、企業はできるだけリアルタイムで顧客と関わり、満足度を測定し、自らも変化し続けることが重要になってくるのです。HappyOrNotを導入するとこの一連の流れを体系的に取り入れることができるようになります。
いかがでしょうか。10の習慣のうち、じつに半数以上の達成にHappy or Notが役立つことが分かりました。
クレームは企業にとってとても扱いが難しいものです。全てのクレームに企業側が対応するということは実質的に難しいとしても、クレームという形になってしまったものは社内で取り上げないわけにもいかず、多くの労力がクレーム対応に使われているのが現実です。ですがそのクレームさえ、顧客の不満のうちわずか4%について教えてくれるものでしかありません。Happy or Notは店舗や会社などの現場において従来型と比べて圧倒的に多くの声を拾い上げるこれまでにない画期的なシステムです。顧客の機微に気がつき、顧客中心型の企業を作り上げるのに最適な仕組みを提供しています。